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天空の街へ ペルーひとり旅 



     第23回   別離の朝  



昼間の夏の暑さは、夜の帳によって追いやられ、いつしか真冬の寒冷な空気が街を包んでいた。
この寒暖の差は日本ではありえない。
もう深夜だ。だが、明日は私もリマに戻る。
宿に帰ってからも話は進んだ。Tさんも戻ってきていた。

結局話は旅のエピソードになった。Aさんは私の憧れのガラパゴスにいったそうだ。
Kさんは旅が長くなると日本食がやはり恋しいと言った。

日本食・・・?
俺のリュックの奥底にカップうどんが入っているのを思い出した。皆さんに進呈しよう。
「いいんですか?」
「僕が食べるよりも、長旅の皆さんに食べてもらったほうが価値ありますよ。」

「下の台所にコンロがありましたね。」Kさんが言う。
いつの頃のものかわからないアンティークなガスコンロがあった。
順調に湯気が出始めた。

シュ〜ン。

お湯がもうすぐ沸きそうだというところでガスが尽きた。
ちょうどお風呂くらいの温度だ。これでカップめんを作ったらふやけるだけになりそうだ。

「大丈夫!」

電磁調理器をAさんがお持ちになっていた。お湯の中に金具を突っ込んで電気の力で沸かすものだ。
しばらくいい感じでわいていたが、ボジョ!妙な音が響いてきた。
「うわお!」Aさんの叫び声。「溶けた!」
熱で器具が破損していた。
が、ぎりぎりのところでぬるま湯は熱湯になっていた。

かくして、電磁調理器一個を犠牲にしてカップめん二つが完成した。実に高くついた夜食だ。
南米で日本人がカップうどんやカップラーメンを食べている光景はなんともいえない。

二人の後ろにはクスコの夜景が美しく光っている。



Aさんは、うどんの揚げに感動をしていた。
私は揚げに感動をするAさんに感動をしていた。




満ち足りた時間は早く過ぎる。

皆さんはしばらくこの街に滞在するが、私は早朝の飛行機でリマに戻るのだ。
                
朝までずっと話していたかったが、上の写真を最後に私はベッドへはいった。
みんなが話す声が聴こえる。自分も混ざりたい。
時間に縛られた海外旅のハンディをこのとき強く感じた。


クスコで出会った人、みんないい人ばかりだ。AさんもKさんもTさんも。
そして いまは遠くにいるMさんもだ。
旅先で出会う人は必ずみんな気さくで話しやすい人たちばかりだ、ということを実感しながら眠りについた。
もちろんそれは狭い見方であることを、身をもって後日知ることになる。







                                                       
目が覚めたとき宿全体がシンと静まり返っていた。みんな一体何時までしゃべっていたのだろう。

最後のお別れを言いたかったがまさか起こしてまわるわけにもいかない。

一人ひとりにお礼のメモを書いてドアの下に差し込んでおいた。読んでくれただろうか?



ドアを閉める直前に、無意識に一礼をしていた。


ありがとう、旅人の皆さん。私はまた皆さんに会いたいです。






今ではすっかり見覚えのある通りから広場に出た。早朝のアルマス広場も言うまでもなく美しかった。

                                 

タクシーを交渉した。相場よりやすい5ソルを言ってきた。迷わず乗る。

ペルーの人、本当にぼったくってこない。



約1時間遅れで飛行機は飛びたち、想い出多きクスコをあとにした。

すぐに想い出多きリマに戻ってきた。飛行機は早い。


もう一つおまけに想い出多き宿に戻ってきたとき、数日前とは違い幾人かの客がいた。

カップルらしい人たちが、DVDを懸命に見ている。

旅人はみんな良い人だというここで得た教訓に従い、当たり前のように挨拶をした。

「おはようございます。どちらから来られたんですか?」


カップルは私を一瞥するとまたDVDに目をやった。さっきより2人の距離を縮めて。

なんなんだよ〜!



しょうがないので、私は街へ出た。



何度も宿泊しているがこうして裏通りをぶらつくのは初めてだ。

ふと左を見ると、一件の食堂があった。オープンカフェのようなスタイルだ。

メニューを見ると全部スペイン語だった。おそらく地元の方たちが利用するところなのだろう。



とりあえずは定食が5ソルと言うことだけは理解できた。

あてずっぽうで注文した定食は、当たりだった。

      

      スープにチキンに、サラダにハート型にかたどったライス。それにお茶がついてきた。


私がうれしそうに食事をしているところを、料理を運んできたこの家の息子が興味深そうにじっと見てくる。

こちらから話しかけた。「このお茶は何の葉ですか?」

英語が分からないようだ。スペイン語で返事が来た。私はスペイン語も英語も分からない。

だが、お茶を指差してみたところ、彼は裏からこんなものを持ってきた。

       

                          何かの花のようだ。

「ハポン(日本人)?」奥に座っていたおばさんが話しかけてきた。

「シー。」それ以上は会話は続かなかったが、ずっと笑顔で何かを言ってくれていた。

言葉は通じないけど、何かが通じ合うこんなやり取りが大好きだ。

一緒にみんなで写真を撮った。

ありがとう、ごちそうさま。みんなのことわすれません。



また歩き出した私は、大きなショッピングセンターを見つけた。

   

認めたくないけど、旅の折り返しはとっくに過ぎている。私はペルーで必ず買おうと思っていたものをさがした。

それは絶対に日本では使えないのだが、なぜだかほしかった。

それは市場の売り場にたくさんぶら下がっていた。

それはもって帰るのすら大変なのだが、結局は自分の思い通りに行動することにした。



このとき買ったアイテムは日本に帰って一度しか着ていない。

それはこれである。

          アルパカのポンチョ

ペルーから帰国直後に、友人といったキャンプで着て以来、日本ではきていない。



宿に戻った。さっきのカップルはまだDVDを見ていた!

話しかけるなオーラが全身からでている。


つまんねえな・・、そう思ってると数人の男性客が入ってきた。

今日は宿は満員御礼のようだ。みなさんおにぎやかにしていらっしゃる。

私は人見知りはしない。だから今夜もにぎやかにすごせそうだ。

昨日と同じように楽しく語り合える一夜になるかもしれない。


そう希望的に予測した。



そしてそれは、やはり、全然当たらない一夜となった。


                                                   つづきたくない
                                                                                                              

 

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