天空の街へ ペルーひとり旅
第22回 旅人たちの夜 街へ
もうすでに見慣れた光景となった石畳の道も、夜歩くとちがった空間となる。
暗闇に潜む動物の息の音、どこからか漂う悪臭。
その中を僕らは歩いた。
だんだんと明かりが強くなる。アロマス広場が近づいてきた。
昼間見た広場も忘れられない美しさだった。
夜はどうなってるのだろう。
不意に視界が開けた。開けた先には、
うわあああああ!
街が
輝いていた。
夜にはこうなるのか。
しばらく私たちはその光を見つめていた。
もう遅い時間ではあったが、まだ人々が歩き店も開いている。
僕らは安い飯屋をさがして路地裏に入った。
思ったよりも店はしまっていた。唯一、屋台が路上でまだ客を待っている。
「しかし、ないですね。」誰かが言った。確かにそうだ。歩けど歩けど、食堂がない。
だが、先頭を歩くKさんは余裕のようだ。
「必ずありますよ。こういう街には。」彼は何ヶ月も南米を歩きスペイン語も覚えてしまったという。
やがて一軒の店を見つけた。お品書きはもちろんスペイン語なため、Kさんに通訳をしてもらいようやく食事にありつけた。
このほかにお茶もついて5ソル。
時間の流れは旅中でも変わらない。Mさんが次の街へ旅立つときが来た。
これまでは偶然に3度お会いできたが、さすがにもう無理だろう。
バスターミナルまでの値段を交渉してMさんはタクシーに乗り込んだ。
僕らはそれを見送った。
もう何も言うまい。偶然の出会いに感謝する。それだけだ。
いまだ人の姿の多い路地裏を歩く。KさんもAさんもいろんな人に声をかけ、露店を見れば覗き込んでいる。
ただ歩くだけでも、俺との違いはなんだろう。おびえながら歩くのが精一杯の自分がいつになれば旅人になれるのか、その疑念が浮かんできた。
でも、それはなろうと思ってなるものではない。いつの間にか旅人は旅人になるのだろう。
不思議なことだ。
毎日会っていても心が通い合わない人がいる。
でも、一度会っただけなのに一生忘れえぬ人もいる。
再びアルマス広場へ出た。
このあと宿に帰り、またいろんな話をするのだが、それは次回に。
それにしてもこの光の輝かしさは何だろう。
だが輝いていたのは街だけではなかった。
この大陸のこの国のこの街でこの人たちに会えた、まさにこの時間そのものが輝いていたのである。
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