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天空の街へ ペルーひとり旅 



     第20回   クスコの路地裏のすばらしさ  


クスコほど美しい街はないと思った。
どの建物も古いものばかりだけど、人々に愛され大切に保存されている。
観光客も地元の人も区別はつかない。皆がこの街に抱かれてそれぞれの時間をすごしているのを感じた。
もう私はきれいな景色を捜すのをやめた。全部が美しいのだ。
         

どんどん路地裏に入っていったつもりだったが、交差点に出るとそこは人でごった返していた。

表通りではわからなかったことが、路地裏にいる今わかった。
観光客も地元の人も区別がつかないと書いたが、路地裏ではちがうのだ。
働いている人が地元の人であり、そうでない人が観光客である。

子どもとて例外ではない。白い飲み物を売る地元の少年がいた。


私のペルー旅も折り返し地点を過ぎた。大観光地であるマチュピチュは見終わった。
これからは少しでも街の空気に触れていこう。

腹が減った私は、迷うことなく地元の人が利用していそうな市場の中に入った。



観光客はまったく利用しそうにない感じだ。
みやげ物はないけど、ペルーの果物は売っている。
客引きなどもちろんなく、地元の人が地元の人のために店番をしていた。

あ、向こうに食事ができそうな場所があるぞ。

カウンターがいくつも並び、数十店の食堂が営業をしていた。人気のまったくない店もあった。
私は一番 きれいな 親切そうなおねいさんが作っている店の椅子に座った。写真を撮っていいですか、ときくとにこっと笑ってくれた。

メニューは全部スペイン語である。必死で「旅の指差し会話帳」をめくって解読する。
でも結局わけがわからなくなり、あてずっぽうで一番安い3ソルのメニューを頼んだ。

もし豚の頭の丸焼きとかすっごいものが出てきたらどうしよう。
あるいは正体不明の生物?

混乱する私の前に出てきたものは、こんな料理だった。
    
じっくりと観察をする。玉子焼きが乗ったチャーハン。サイドには生野菜が乗っかっている。
おいしそうだ。
それにしても、これはなに?唯一、悩んだのがこの存在感たっぷりの黄色をしたものだ。
チャーハンにのっているもの、

バナナ?


焦げ目がついている。どうやら、焼いたバナナが添えられているようだ。
これは、チャーハンを食ってデザートにバナナを食べろということだろうか、それとも・・・。


ポン!


バナナについて悩んでいる私の肩をたたいた者がいた。こんなところに知り合いがいたっけ?


あ、さっきの謎の車の中で私に声をかけてくれた青年だった。
「驚きましたよ、日本人さん。また会いましたね。」
「こちらこそ。私も驚きました。」
「この店の彼女は僕の友人なんです。昼食をとりにきました。」
あの優しそうななおねいさんの友人だったのだ。

彼も英語は少ししかできないという。私なんか少しどころかぜんぜんだめだ。
でも駄目なもの同士、お互いの片言の英語を必死で聞き取りながらやり取りをした。

「あなたはクスコに住んでるんですか?」
「そうです。この近くの病院で働きながら看護師の勉強をしながら観光ガイドの勉強をしてます。」
・・・・・・・病院で看護師の勉強をしながら観光ガイドの勉強をしているというのがどうにも理解できない。
私の貧相な英語耳にはこう聞こえたのだ。

「一つきいていいですか。さっき無理やり車を交代させられたの、なんですか?」
「小さい車にたくさんの人を詰め込んで運ぶほうが安上がりなんですよ。ペルーではよくあることです。」
そういうことか・・。
彼は小さなスープだけを注文した。聞くと胃の調子が悪いという。私に合わせて無理に注文をしてくれたに違いない。
ペルーの人は本当に他者思いだと感じた。

市場を出た。
「どこに泊まるんですか?」
「まだ決まってないですよ。」
「案内しましょうか?この街は初めてなんでしょう。」
「いいえ、大丈夫です。でも最後に一緒に写真を撮ってください」

    

別れ際に彼の住所も聞き、上の写真も送付したが返事はなかった。
私のことを忘れたのだろうか。
でもかまわない。遠い地球の裏側に一人の友人がいるというだけでもすばらしいことだと私は信じている。



一人になった私はまた路地裏を歩き始めた。
緩やかな坂道を下ると、いくつかの商店が集まる通りに出た。


何を売ってるのかわからない雑貨屋。いかにも南米的な色合いの衣料品店。
でも一番多いのは、建物を持たず路上の石畳が店舗となったものだ。




人いきれの中をくぐり、わざと迷い、少しでも南米の空気を吸収することができたのか迷う私の前に
再びかの大聖堂が姿を現した。

       

この荘厳さ、
     色合い、
         存在感。

これまで見た建物の中でも目と心を離すことのできないものだった。





もう一日が終わる。もったいない。短い休日をつかって旅するものにとっては、日没というのは災厄に近いのだ。

私はあの坂道を登り始めた。
  
眼下に朱色に彩られた街が一日の終わりを待っている。

俺も一日の終わりを迎えるために宿に行こう。
どんな宿だろう。楽しい宿だといいが。

                                                        

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