天空の街へ ペルーひとり旅
第13回 ワイナピチュ登山
マチュピチュに出会いたいと思ったのは、おそらくは小学生の頃だった。
一瞬写真を見ただけで、どんと心臓をつかまれることが人生のうち時々あるが、マチュピチュもその「時々」出会った存在だった。
その人生でめったにない存在のもとへやってきた。現実に俺の前にある稀有な遺跡は、霧に包まれている。
「まずはワイナピチュ山の上へ行きましょう。」Mさんが言った。
そうだった。もうマチュピチュを見た瞬間に忘れていた。あんなに苦労して並んだのに。
遺跡の間を通り抜けて、登山道をゆく。
ただでさえ高地で酸素が薄いのに、猛烈な急坂である。息が一瞬で上がりはじめた。
Mさんはこの登山に備えて、体力づくりをずっとしていたそうだ。
俺はかわらずだれていた。これが歩き方にも影響が出ている。
たびたびお待たせしてしまった。
斜面の右側にこれから登っていく階段が見えている。
あんな断崖にあるのか。
上り始めてから30分が経過した。
まだ霧が晴れない。
断崖の角度はどんどん険しくなる。周りの欧米人にどんどん抜かれていく。
身長は俺の1.5倍、脚の長さは絶対倍はある。ずるすぎである。
今度生まれ変わったら、身長185センチの男になりたいって、そんなことを考えている場合ではなく、息を一つするにも苦労し始めた。
70時間以上寝てないし、飯食ってないし、空気は薄いし、脚は短いし、もうやだ。だから脚の話はもういいのだが。
これが悲惨な私の息と声である。
登山道のあちこちにいくつもの遺構がある。
マチュピチュ遺跡はいかにも有名なあの建造物だけではなく、山全体に広がる存在なのだ。
濃霧に包まれる遺跡。
そしてなぜかトンネルが現れた。正確に言うと岩をくりぬいた通路である。
これを潜り抜けると何があるのだろう。
もちろん、決まっている。
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