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天空の街へ ペルーひとり旅 



     第9回   深夜のマチュピチュ村 独り  


少しでも仮眠をとろうと思ったが、結局は起きていた。

車外の景色は美しいそうだが、空気までが漆黒に沈んでいて何も見えない。

それでも窓の外にはアンデス山脈やものすごい川や、あるいは遺跡などがあるにちがいない。そう思うと興奮してしまうのだ。

だから今は眠れなくて良い。ホテルに着いたら泥のように眠るのだ。


ホテルだが、さすがに1時半につくから、

リマにいるときに予約をして

駅まで迎えに来てもらえるように手配しておいたのだ。



ふっふっふ。予約の大切さを今回は学び実行したというわけだ。





列車が止まった。ここがどこだかわからない。アナウンスももちろん入らない。

だが周りの乗客がみんな降りる支度をし始めた。私もそれに習い降りる。



ぐんと気温が下がっているのがわかった。


辺りの景色は真っ暗で何もわからないが、とにかくもここはマチュピチュだ。

身が引き締まるのが自分でもわかった。


ホテルの送迎がたくさんきていた。

みんながどんどん導かれていく。

俺も自分の予約したホテルの人を探した。あるいは「Pisuke」とかいたプラカードを捜した。

深夜なのに人が多くてなかなか捜せない。



みんな、どけ!







すこしずつ人の姿が減ってきた。ふふふふふ、よし、俺の出迎えの人、来なさい。




どこかな?




どんどん人がいなくなる。みんなホテルに行ってしまう。










俺の出迎えの人、
来い。





来なさい。






来て・・・・・、ください・・。








どこにも「Kホテル」のカードはなかった。「Pisuke」のカードもなかった。



カードだけではなく、人もいなくなった。





みんな行かないで!







ホテルの人、来てください。












                       そしてついに、ホームには誰もいなくなった。


















たぶん・・・・・・・逃げられたな。




夜の一時半に迎えに来るってのが嫌になったんだろう。





周囲に本当に人はおらず、駅員がいかにも今から俺は帰るといった顔でどこかへ行く後姿が見えた。




身が引き締まるどころか、縮みこんでしまっている。




なにかにすがりたくて「地球の歩き方」のマチュピチュの欄を見たが、深夜にホテルの人に逃げられた場合についての

アドバイスなどもちろんかいていなかった。





さすがに心臓が痛くなってきた。こんな寒い夜にどうせよというのだ。
予定ではすでにホテルに入り、ぬくぬくシャワーを浴び、ぬくぬくベッドに入り、ぬくぬく枕に頭を乗せ、
重い荷物は全部置いて、明日のいや今日の早朝にマチュピチュへ向けて軽やかに旅立つはずが・・・・・・。


こんなところで、いまだにリュックを抱えてなぜか地球の歩き方をめくっている!


やけくそで一枚写真を撮ってみた。

はい、ちーず!










パニックで手振れをしている暗黒写真とともに・・・・・・・・・・・・・つづく。



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