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天空の街へ ペルーひとり旅 



     第8回   深夜のオリャンタイタンボ  


すぐそばにアンデスの壁が迫っている。空は相変わらず青く澄んでいるがよくみると、雲に赤みがさしてきている。

南米にも夜がやってきている。ついでに日本人を起こしているのだろう。みなさんおはよう。


道が平坦になってきた頃、向こうに小さな集落が見えてきた。
               
人々が行き交っている。子どもたちもいるが学校帰りではなく、仕事帰りのようだ。
そしてここでも柔らか味のある石畳が建物と人々をささえていた。
数十歩進めば、端についてしまいそうな小さな村だった。
こんな村でぶらり各駅停車の旅もいいなあ。


「ついたよ。」運転手が車を停めた。


こ、ここですか?前言撤回してもおそいっすよね?

この各駅停車しか絶対にとまらなさそうな町。いや、村。

ここで7時間も列車を待つのか?

マチュピチュ鉄道の駅というから、私はそれなりに繁華街があり飲みながら列車を待てると思ったのだ。

運転手は「Good luck!」意味深な言葉を残していってしまった。

一人残された俺のなさけな〜い姿。なぜか足元に丸太が転がっていた。
手にはすぐそばの売店で買ったクラッカーの袋がある。


辺りを見ると列車を待つ人々がベンチに座っている。でもほとんどが家族連れやグループのようだ。
行動する分にはかまわないのだが、「待つ」時のひとり旅は実に惨めだとこのとき感じた。



さらに惨めさは増していく。猛烈に寒くなってきた。山が近い、というよりも山の中にいるせいだろう、
ガタンと音を立てるようにして気温が下がっていくのがわかる。

もっと惨めな気持ちになってきた。マイクロバスでやってきた団体様が早くも列車に乗り込み去っていった。
予約・・、大切なことだったんだ。



もっともっと惨めな気持ちに襲われた。



したい。



したくなってきた。




俺・・・・・、




もれそう!

寒いからおしっこにいきたくなってきた。すぐとなりに公衆トイレがあるのだが、なんとなく有料っぽい。
迷わずすればいいのだが、どうしても有料のトイレってものには抵抗があるのだ。


なんとか我慢する俺。一体南米まで来て何をやってるのだろう。
列車が来るまであと6時間。



はい、背景が暗くなったから夜が来たのがお分かりですね・・・。

そう、夜がきちゃった。寒いよー。



続々と人がやってきては列車に乗り込んでいく。みんな団体様。みんな予約済み。

そしてホテルについてふかふかベッドで眠るのだろう。

そうおもうとさすがに弱気になってきた。次の旅から俺はツアーを利用しよう!

俺は団体様ピースケになる!

本気で決意した。








切符売り場に場所を移した。ここだと風があまり来なさそうだ。


おしっこのことを忘れるために、般若心経を唱えよう。

って、一体南米まで来てなにをしてるんだろう。また同じ思いが心を乱してくる。



そんなときに限って不思議とお越しになるのだ。

「みなさん、お疲れ様でしたー。ここでバスにお乗換えください。」

日本語がまた聞こえてきた。満足そうな顔をしたお金を持ってそうなお方たちがしずしずお歩きになっていらっしゃる。

おマチュピチュからお帰りなのだろう。

「いやあ、ここは寒いですね。駅からバス停まで5分歩くだけでも凍え死にそうですよね。はやくバスに乗りましょうよ。」

お上品そうな奥様がおっしゃっている。

この人たちはすぐそばに惨めに凍え死ぬのを待っている日本人がいるとは思ってもいないだろう。

5分お歩きになるだけで凍え死ぬのか・・・。じゃあ、すでに4時間が経過した俺は白骨化してるね。



その上、あと3時間は待たないと・・。

おバスのおエンジン音とお上品なお笑い声が遠ざかった。

その代わりに俺の腹の虫とおしっこがちゃぷちゃぷいう音が聞こえてきた。

実に情けない・・。


                          

                              

                       凍え死なないように急いでお歩きになられているお団体様様様



こんな書き方をすると、ピースケが実に軟弱な人間のようだが、実はまったく本当に軟弱なのである。

このとき、本気でペルーに来たことを後悔していた。沖縄とかそういう暖かいところに旅をしていればよかったな。

空港のトランジットで10時間待ちならまだ耐えられる。空調も効いてるしトイレもある。売店もある。

でも、このぶらり各駅停車ポットン便所しかありません的な町では本当にすることがないのだ。



そういえば、俺より一本早い便でリマをたったMさんは、列車を予約していたといってた。

すでにマチュピチュ村について、旅の気分を謳歌していることであろう。ホテルのトイレでおしっこもできるのだろう。

彼のような冒険心を持ちつつ、的を射た計画性を持った旅人に俺も成長したかった。もはや手遅れだった。






それでもだ。ようやく23時を回った。何でもいいから変化がほしい。私は駅に通じる門の前に来た。

この門、実に怖かった。なんだかゲットー(収容所)のようなのだ。

おそらくはこの地では鉄道はまだまだセキュリティが必要な場所なのだろう。たとえ観光地でも。



そして!


待ってました!


マチュピチュ列車!


                          


周囲にはさっきまでいなかったはずの人がたくさんいる。みんな時間を上手に調節してここまで来たのだろう。



でもここまできたらそんなことはどうでもいいのだ。俺は列車に乗るのだ。

のるときにパスポートを提示させられたのに驚いたが、でものれたら幸せだ。

他の乗客は、なんと言う順応力だろう。すぐにお休みになっていた。



ピースケはそんな方たちの写真を撮っていた。

とにかく、これで一安心だ。良かった・・・・・・。




この「良かった」を裏切られるとはこのときのピースケは知る由もなかった。





なお、我慢していたおしっこをどうしたかは聞かないでほしい。              


                                                    



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