第22回 僕、北海道大好き

今、旅人を見守る神様が俺の前に現れたら、これを願う。
「晴れさせてください。」


北海道屈指の絶景を目指して俺は今チャリをこいでいる。正確に言うとほとんどチャリからおりて必死で押している。
それほど急ではないのだが、疲弊した体と心、おまけにこんな天候では力も出なかった。


しかも見通せる広さのため、自分が進む遙か向こうまでのぼりであることがわかり
実に辛い。

前日は海辺の公園で寝た。
もちろん雨の中で。

雨の中の野宿で一番面倒くさいのが、ぬれたテントの収納である。朝、チャリにぶら下げたとき
テントが倍の重さになっていることに気づいた。
さてと・・・。どこへ行こうか。本当は開陽台に行きたかった。北海道屈指の展望らしいのだ。
しかしこの雨である。よし、街の中を目指そう・・・・・。そう思った。
だが、である。雨だからといって街を走っていても、結局は開陽台に行きたくなるのではないだろうか?
ええい、もういいや。雨でも曇りでも雷でも台風でも地震でもいいから開陽台へいこう!
この自分の殊勝な心がけがちょっぴり誇らしかった。こんなにがんばっているのだから、神様もそろそろそろそろ一週間ぶりに晴れをプレゼントしてくれるのではないだろうか?


かくして俺は今こんな道を登っている。                                                  

向こうのほうに展望台が見えた。
自己満足に過ぎないのだが、ラストの一キロは必死でチャリにまたがりこぎ続けた。

さ、もうすぐ頂上です。神様、そろそろそろそろそろそろ、晴れですよ、晴れ。



着いた~!

なにこれ?

なにこれ?

これはなんやねん!!

ぼけぼけぼけぼけー、ほっかいどうなんかきらいや。
おれはせっかくはるばる坂道を こいで 押してきたのになんでこんな景色しか見えへんねん。
灰色に沈む景色からは何の感動も与えられなかった。


視線の先にはキャンプ場があり、そこにいくつかのテントが見えた。
降りしきる雨にふさがれて、ひっそりとしたテント村になっていた。
いや、一人学生っぽい旅人がテントから出てきて、となりのテントに向かって話しかけているのが見えた。
ツーリング旅中なのだろうか。



開陽台での劇的な天候の変化をあきらめて俺はチャリにまたがり下り始めた。
途中、一台の車がとまり話しかけられた。一昨日泊まった宿にいた人だった。
「えー、この道を自転車で上ってきたの?すごいね?」
「いやあ、ほとんど押してましたよ。」
「でも、天気が残念だったね。私たちは一度おりて、晴れたらまたのぼりなおしますよ。」

「のぼりなおし」、チャリには絶対にできない行為である。


ってことで全国の女子高生のピースケファンの皆さん、ピースケの旅はあきらめモードになってしまいました。
そしてこれからもっとヘタレな日記になります。



こいで、こいで、こいで、

降って、降って、降って・・・。


根室の町に入ったけど、空は依然として灰色で、
昼飯を食う場所もほとんどなく、ようやく入った店は北海道の幸どころかカレーしかなくて
            

野宿場所に選んだ「道の駅すわん」からは「とてもすばらしい湖」が見えるといううわさだけど
それを期待するほど、私はもうウブではなかった。
その覚悟を試すかのごとくの景色がそこにあった。

灰色の湖。「すばらしい湖」は私には与えられなかった。



夜が来た。


この霧にむせぶ道の駅で一つの決意をした。

明日晴れなければ俺は旅をやめる!
あまりにもおもしろくなさすぎるではないか。
だから明日が同じ天候なら、本気で旅を辞め大阪へ帰ろうと思った。
ばかばかしい決意だけど、そのとき、本気でそう思っていた。

そして翌日・・。

                                       

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