第18回 知床岬の先端へ行きたい(相泊温泉)

タイトルの「知床岬の突端」が、今回の旅の最大の目的地であった。
道が途中でなくなり、あとは道なき道を行くしかないというのだ。
でもたどり着いた岬の先端は別天地のように美しい広場となっているという。
そこにたどり着くまでは二泊くらいはしないといけないそうな。
そしてこのルートこそが日本最後の秘境。

←つまりはこの岬

行きたいっす、行きてー!
よし、行こう!簡単に結論を出して北海道の旅に出発したのだ。
携帯が圏外に違いないと思い、なんと無線の免許まで取り無線機を買ってしまった。


実に単純な男である。

その単純なやつは、今単純な道を走っている。
まさに一本道である。
さらに色までが単純になっているではないか。
つまりは悪天候で灰色の光景。

こでもいいのだ。俺の進む先には知床岬があるのだから。


この岬へは一人で行ってはいけないといわれている。熊の生息地のど真ん中だからである。
実は私はここへ来るまでの間に、同行者がいないかをさがしてみたのだが誰もいなかった。
今はそんなことをする人はほとんどいないのだろうか。
となると一人で行くしかない。私のこの選択が正しいかどうかわからない。
でも脚が勝手にペダルをこいでいた。



途中に「ひかりごけ洞窟」があるという。光るものが好きなピースケはまずはそこを目指した。
こんなに天気が悪いのだから、むしろ光る苔は美しく洞窟の中で俺を待っていることだろう。
あ、前方に見えた。
この看板が俺を待っていた。


落石のために立入り禁止
チャリを降りることすらせず俺はペダルをこいだ。まっすぐ進むしかないのだ、先っぽに向かって。




などとものすごいポジティブを装っていますが、実は怖くてしょうがなかったのである。
どんどん日の光は暗くなり、民家はお約束どおりに少なくなっていく・・。


足元からぎーぎーと不愉快な音が聞こえてくる。
昨日までは気にならなかったものが、目に映る無機質な景色のおかげでより強調されてしまっているのだろう。


こうなれば開き直るしかない。
この寂しさも「情緒」と思えばいいものになる。

道の片側に見え隠れしてきた家々も、いつしか「小屋」となった。
これは住居ではなく昆布の番屋であり、その軒先には「アルバイト募集 ライダー歓迎」とあった。
いいなあ、俺もここでアルバイトをしてみたかった。そういえば、旅先で働いたことは一度もない。

        




霧のような雨が降っている。

遙かに見える道の向こうにまで、その雨粒が無限の群をなして舞い狂っていた。

俺も無限にペダルをこぎつつけている。今日で何日たったのだろう。無限の時間がたった気がする。



どんどん淋しくなっていく。
淋しさはいつしか悲しさにつながっていく。                                                   
打ちすてられた舟が、何年もオホーツクの波の叫びを聞きながらそこにあった。
ずっと俺はこの海を見ていた。
大阪を出るときに見たいとあこがれていたオホーツク海に俺はいつの間にか出会っていた。
あまりに淋しい出会いだった。

でも、行く手には知床岬が待っている。淋しくない!



合羽を着てはいたが体の芯まで冷えてきた。
冷えてきた?そうだ、この道は温泉天国だった。
しかもそのほとんどが無料だという。そうや、無料やんけ、入るに決まってるやんけ、われ!
と、大阪人根性をまたものぞかせつつ走っていくと、かの有名な瀬石温泉が見えてきた。
ここは昆布取りの番屋さんが管理していて、一言声をかけてから入るようになっている。
が、声をかけるまでもなく、お湯がなかった。



残念だけど次の温泉を探そう。




キャンプ場を出てから十数キロをこぎ続けた。
民家が消え、番屋に変わり、ついにその番屋も見えなくなった。

だが、なぜかこんなものが見えた。

なんだろう、降りてみることにする。


中にはこんなものがあった。
      
湯気の立つ温泉があった。
迷わず入った。

熱い!でも冷え切ったからだにはちょうど良かった。

ここが有名な
 相泊温泉
である。もちろん無料。
中からはこんな光景が見えるのだ。
まさに最果てである。





この看板を見たとき、知床岬の一番先から巨大な手がでてきて、私の心臓をつかんできた。
ついに来た!この看板である。
              





























                   ではなく、








                                                 
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