第13回 知床岬の西


今俺は海を見ている。
チャリをこぎながら海を見ている。     





他の乗り物ではできない「よそ見」という行為が、

この上もなく貴重に思えた。





やがて視点は手前に移動した。
何の花だろう。こんな風の強いところに。                              
まだまだチャリをこぎながら、花の向こうに動くものを見つけた。

                        

なんの鳥だろう。こんな北の果ての空に舞っている。
僕はずっと鳥を目で追った。虫が邪魔したが、鳥を見落とすまいとさらにチャリをこぎながらよそ見をした。

鳥を追っていて素敵な色を見つけた。         
                                                                                     

この海の青さに驚愕した。透き通る青さを持った海の上を白い鳥が舞っている。
こんなすばらしい光景、私をびゅんびゅん追い抜いているバスの団体様は絶対に見られないのだ。
柵を乗り出さないと見えないからね。

そう思うと脚に激痛が走り始めていることも受け入れられそうだ。
もちろん今、孤独であることも。


さらに俺の視線は休むことがなかった。
もちろんチャリをこぎながらである。鳥たちを追っているうちにこんなものを見つけた。
                                                                                      
あのなんともいえない山はなんだろう。
どうするか?
行くに決まっている。

目的地などないのだ。行きたいところにいくのだ。





一気に坂を下った。目指す不思議山はどこだろう?  
周囲は普通の町となった。さすがにこの荷物満載のチャリは目立つ。
ん?なんだ?あの標識は?

                      

標識に従って進むとやがて前方に岩が見えた。これがオロンコ岩なのだろう。
かなり急な階段がついていた。それを上る。


そして、上りきるとそこには知床岬を一望できる光景があった。
                                    

「お兄さんどこから来たの?」子どもをつれたおっちゃんに聞かれた。
「大阪です。」
「大阪から?バイクですか?」
「いえ、自転車です。」
「うらやましいなあ。」そういいながらおっちゃんが下の写真のシャッターを押してくれた。
                    

階段をおりるとさっきのおっちゃんの子どもが私のチャリを見てこういっていた。
「すごい荷物!」
確かに山を背負ってこいでいるようだ。

そのすごい荷物で進むと向こうにまたすごいものが見えた。
ネッシー?
                       

道の向こうにネッシーがいる。



もちろん近づいてみる。

                       

確かにネッシーがいた。
この岩が何だったのかしらべていない。ネッシーのままでいいのだ。




自由に走っているといえど、夜は休まねばならない。
向こうに看板が見えた。
「国設知床野営場」。この名前に「知床」と着いているところが気に入った。

すごい坂を上る。さすが岬だ。

まただ。俺を車が追い抜いていく。

のろのろ上る俺の前にこれがいた。

                     
うわお!街中に鹿がいるなんて。
さらに近づく。                   



             
その牡鹿はまっすぐに何かを見つめていた。


そして俺は何を目指してここへ来たのかしばらく忘れていた。

あ、泊まるところや。


             
またチャリを漕ぎ出した・・・・・・。

って、一体この赤い光は何だろう?
もしかして?

俺はその光に導かれていった。


林の中からその光はさしてくる。

そしてその向こうからは予想通りの美しさがあった。


                        

おおおおお!これこそが、


日本で最初に沈む夕陽ではないか。



落ちていく赤い光を見ながら、今日一日はすばらしかったと思った。

何にも縛られず自らの視線の向くままに進みここまでやってきた。


OさんやMさんと別れたのはほんの10時間前のことなのに、もう大昔の気がする。

ましてやおっちゃんらに卑下されたのは、もう有史以前の話だ。


そんなことを考えていると、本当に有史以前から行われている日没が僕の眼前で終った。

                         









そしてテントを張った俺はまた、なぜか鹿を追い続けていた。

このキャンプ場には鹿が当たり前のようにやってくるのだ~。

                              

動物好きのピースケには実にすばらしい場所だった。



あ、飯を食わなきゃ。

もちろん自炊をするのだが、実は俺、食事作りが苦手なんですよね。

なのでインスタントですましました。しかも北海道ならではのもの。

やきそば弁当!これは美幌のユースでお会いしたTさんが食べていたものだ。

これにはオプションでスープがついてくるのである。






ああ、旅の4日目が終わる。次は当たり前だけど5日目だ。

5日って、あなた、仕事をしていたら無限に長い時間じゃないですか。

それが旅中だと一瞬にしか思えない。この感覚は何度旅をしても拭い去れず

繰り返すことになるのだ。

そんなことを考えながら俺は就寝。外では鹿の足音がしている。


                                           


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