第6回 ありがとう





GGGGGGGGGG




あほう!



GR GR GR GR GR  P!






ぼけ~!





MK MK MK~!







ありえへん!


マジでお前ら死ね。



この謎の言葉の真相は後で述べる。




癒しを得た私はさわやかな気持ちでユースに戻った。
そうだ、俺は周りに左右されることなくチャリをこぎ続けるのだ。

こんな健やかな精神状態には地元のビールと地元の新聞がよく似合う。
     
寝る前にいっぱいだけ所望した。

気づけば11時を過ぎている。ユースの客の消灯は早い。
あの面倒くさいおっちゃんらといえど、旅人の仲間だ。安眠妨害をしてはならない。俺も寝よう。


そーっと部屋に入る。


部屋は真っ暗でおっちゃんらが寝てるのか、それとも戻ってないのかはわからない。
とはいえ、時間に応じたマナーとして俺は電気をつけず、手探りで自分のベッドに入った。



おやすみ、北海道。
今日も一日ありがとう。



静かに就寝。






・・・・・・・・・・・、




数分経過。




がちゃ!



ドアが開く音がした。
そうか、一人だけまだ帰ってなかったのか。


そう思ったとたん、その自然を愛するおっちゃんは


部屋の明かりをおつけになられた!


はい?
「さてと、明日の準備をしないとな。」
独り言を言い始めた。


おいおい、周りのことを何も考えずに電気をつけるなよ。
でも空気をまったく読めないその人物は、がさがさとでかい音を立てながら荷物を整理し始めた。

早く終われ!





「えっと、これはいるかな?まあ、ええか。」

いちいち独り言を言うな!



ようやく終わったのか、電気が消えた。


よかった。俺も寝よう。他のおっさんも寝てるはずだ。





おやすみ、北海道。
明日こそよろしく、北海道。


旅人は就寝。






がちゃ!



げ?
またドアが開いたぞ。
まだバカが残っていたのか?


ぱち!



やっぱり電気をつけた。


もう驚きもしない。自分のことしか考えてない人の行動パターンが読めた。

すると「おい、電気をつけるなよ。」



こともあろうに、


さっき電気をつけて荷造りをしていたおっさんが苦情を言った。


そうなのか、自分が迷惑をこうむると嫌なのか。

「ああ、すまん。」電気をつけたおっさんは割りとおとなしく電気を消した。
この人たちとは一生友達になれないな。


ようやく寝られる。



おやすみなさい。
本当に俺を寝かせてね、北海道。



就寝。






ぐじゅぐじゅぐじゅ!



げ!?


おっさんが部屋の洗面台で歯磨きを始めた。


やめんかい!洗面台はすぐ外の廊下にもあるのだ。
数メートルを惜しんで就寝中の部屋で磨くデリカシーがわからない。

もちろんさっき文句を言ったおっさんが今度も怒り出すだろう。
そう思ったとたん、


ぐわ~、ぐわ~!


ものすごいいびき。
もう寝たのかよ?
それ以前に、ありえない騒音。

かくして神経質な俺一人が悩まされることとなる。





GARA GARA GARA!(うがいの音)



GOGOGOGOGOGOG!(いびきの音)



早く終われ。終わってください。



特に謎なのが、おっちゃんってどうしていちいち歯磨きのときに、
か~!ぺ!ってタンを吐くのだろう?
このおっさんもご丁寧に何度もその不愉快な音を立てていた。




ようやくその歯磨きタン男もおやすみになりやがった。

GGGGGGGGGGGG!!!

GGGGGGGGGGGGGG!!!



ぎゃ~!!!!!!助けて!
いびきの音が倍になった。



でも、これはしょうがない。
さっきの電気をつけて独り言をいいながらの荷造りや、
就寝した部屋での歯磨きは故意だが、このいびきに悪意はない。

私は自分にそう言い聞かせて、



就寝・・・。






がちゃ!


おい、お前は今すぐ死ね!
俺が気を遣っていたとき、おっさんは誰もこの部屋にいなかったのだ。
そして日付をこえて続々と帰ってきては、騒ぎを起こしていくのだ。



ところが、そのおっさんは電気をつけることなくすぐにベッドにはいり就寝する気配を立てていた。
あ、すいません、死ねとか言っちゃって。最後にようやく常識あるおっちゃんが来たのだ。


おやすみなさい。俺は今度こそ寝られそうだ。









もくもくもくもく。


ん?


このにおい。

最悪。マジ最悪!


最後に入ってきた静かにしていたおっさんが、

タバコを吸いはじめた。


ユースの寝室は禁煙だとはっきりと壁に書かれている。

深夜で誰も見てないかと思ったのだろう、サイレントキラーはマナーを故意に破りタバコをすい始めたのだ。



俺の我慢はリミッターを振り切った。

「すいません、この部屋は禁煙ですよ。」おれはみんなに聴こえるようにはっきりとした声で言った。




しばらくして・・・・・・



「ち!」



舌打ちする音がして煙の匂いが消えた。




俺は真っ暗な部屋で天井の部分を見つめながら考えた。
どうしても寝られなかったのだ。


お遍路にせよ、九州チャリ旅にせよ、沖縄の旅にせよ、インドの旅にせよ、
出会った人がすべていい人だった。
そして実に単純な発想だが、旅人は古今東西を問わず、すばらしい人ばかりだと信じきっていた。

ところがそうでないと教えてくれた人がいたのだ。
この一夜の体験を俺はわすれまい。
いや、早く忘れたい。


いつしか俺は考え疲れて寝ていた。
次の日こそいい日だと信じて。


そしてその次の日はすぐにやってきた。



                                          

                   

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